1. 歯ぐきから膿が…これって何?押すと痛い、臭いも気になる

 

 

歯ぐきがぷっくり腫れて白いものが…不安な症状の正体

 

ふと鏡を見たときや、舌で触れたときに、歯ぐきの一部がニキビのようにぷっくりと赤く腫れ、先に白い点のようなものができていることに気づき、不安に思われたかもしれません。その白い膨らみの正体は、多くの場合「フィステル」または「サイナストラクト」と呼ばれる膿の出口です。これは、歯の根の先や歯ぐきの奥深くで細菌感染が起こり、そこで溜まった膿が、内圧に耐えきれず体外に排出しようとトンネルを作った結果です。単なる口内炎とは異なり、これは体の内部で起きている問題のサインです。原因としては、進行した歯周病や、歯の根が病巣を持つ「根尖病巣(こんせんびょうそう)」などが考えられ、専門的な診断が必要な状態と言えます。

 

 

押すと出る、しょっぱい味。これ、放置しても大丈夫?

 

腫れた歯ぐきを指や舌で押すと、白い膿が出てきて、しょっぱいような、あるいは血が混じったような不快な味がすることがあります。膿を出すと一時的に腫れが引いて楽に感じられるため、「このまま様子を見ても大丈夫だろう」と思われがちですが、それは極めて危険な考えです。膿を出す行為は、問題の根本的な解決には一切なっていません。原因となっている細菌感染が歯ぐきの内部に残っている限り、体は膿を作り続けます。放置すれば、感染はさらに広がり、歯を支える骨を溶かしてしまう重症の歯周病へと進行したり、歯の根の病気が悪化したりするリスクがあります。痛みを感じない場合でも、症状がある時点で放置せず、必ず歯科医院に相談してください。

 

 

マスクをしていても気になる、特有の不快な臭いの原因

 

歯ぐきから膿が出ている場合、同時に口臭が強くなったと感じる方が少なくありません。「マスクをしていても自分の口の臭いが気になる」といったお悩みは、この症状と深く関連しています。膿そのものにも臭いがありますが、より大きな原因は、感染を引き起こしている細菌、特に歯周病菌の活動にあります。これらの細菌はタンパク質を分解する過程で、「揮発性硫黄化合物」という強烈な臭いを持つガスを発生させます。これは、歯周病が重症化するほど多く産生されるため、歯ぐきからの排膿は、口臭の悪化と病状の進行を示す直接的なサインなのです。セルフケアでは決して取り除けない、体の内側からの警告と捉えることが重要です。

 

 

 

 

2. まずは知ることから。歯ぐきから出る膿の正体

 

 

膿は細菌と白血球の戦いの痕跡、「フィステル」との関係

 

歯ぐきから出る膿とは、一体何なのでしょうか。これは、体の免疫システムが細菌と戦った結果生じる「戦いの痕跡」のようなものです。歯周病菌などの細菌が歯ぐきの内部に侵入すると、体を守るために白血球を中心とした免疫細胞が駆けつけ、細菌と戦います。その戦いで死んだ細菌や白血球、そして壊れた組織細胞などが混ざり合ったものが膿の正体です。この膿が歯ぐきの内部に溜まると、内圧が高まります。その圧力を逃がすため、体は骨を溶かして歯ぐきの表面まで続くトンネルを作り、膿を排出しようとします。この膿の出口が、ニキビのように見える「フィステル(瘻孔:ろうこう)」なのです。フィステルがあるということは、その奥で今も戦いが続いている証拠と言えます。

 

 

なぜ膿は自然に治らないのか?体の防御反応の仕組み

 

「体の防御反応なら、いずれ自然に治るのでは?」と思われるかもしれませんが、残念ながら歯ぐきから出る膿が自然に治まることはほとんど期待できません。なぜなら、免疫細胞が細菌と戦っている一方で、その細菌の供給源である歯周ポケットの奥深くや歯の根の中に潜む汚れ(プラークや歯石)は残ったままだからです。体は膿を排出することで一時的に症状を緩和させようとしますが、原因菌がいる限り、戦いは終わらず膿は作られ続けます。つまり、出口(フィステル)から膿を出すという行為は、根本的な解決ではなく、慢性的な炎症が続く「こう着状態」に陥っているサインなのです。この状態を放置すれば、歯周病は静かに、しかし着実に重症化していきます。

 

 

膿の色や状態でわかること、体の危険信号を見逃さない

 

歯ぐきから出る膿は、一般的に白血球の色を反映した黄色っぽい白色をしています。炎症が強く、出血を伴う場合は、血液が混じってピンク色や赤みを帯びることもあります。また、粘り気が強いこともあれば、サラサラしていることもあります。しかし、こうした色や状態でご自身が病状を判断することは非常に危険であり、意味がありません。最も重要なことは、「膿が出ている」という事実そのものが、体が発する重症の危険信号であると認識することです。どのような色や状態であれ、膿の存在は、細菌感染が慢性化し、体の免疫システムだけでは解決できないレベルに達していることを示しています。このサインを見逃さず、速やかに専門家である歯科医師の診断を仰ぐことが不可欠です。

 

 

 

 

3. 膿の多くは「歯周病」が原因です

 

 

日本の成人の約8割が歯周病の所見あり?歯周病の基本知識

 

歯ぐきから膿が出る場合、その背景には歯周病が隠れている可能性が非常に高いです。歯周病は、歯と歯ぐきの境目に付着した歯垢(プラーク)の中の細菌が原因で引き起こされる感染症です。初期段階では歯ぐきに炎症が起こるだけですが(歯肉炎)、進行すると歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてしまいます(歯周炎)。厚生労働省の調査でも、成人の多くが何らかの所見を持つと報告されており、誰にとっても決して他人事ではない国民病と言えます。初期には痛みがほとんどないため「サイレント・ディジーズ(静かなる病)」とも呼ばれ、気づかないうちに重症化しているケースが少なくないのが、この病気の最も怖い特徴です。

 

 

初期症状は歯ぐきの出血、膿はかなり進行したサイン

 

歯周病は、その進行度によって現れる症状が異なります。初期のサインとして最も分かりやすいのは、歯磨きのときに出る歯ぐきからの出血です。また、歯ぐきが赤く腫れぼったくなる、といった症状も見られます。もし、この段階で適切なケアや治療を受ければ、比較的容易に健康な状態に戻すことが可能です。しかし、これらのサインを見逃し、病状が進行すると、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)が深くなり、そこで細菌が大量に繁殖します。その結果として「膿が出る」という症状が現れるのです。つまり、膿の排出は歯周病の初期症状ではなく、病状がかなり進行し、重症の段階に近づいていることを示す重要な警告サインと言えます。

 

 

歯周病以外で膿が出る可能性(根尖病巣・歯根破折など)

 

歯ぐきから膿が出る原因の多くは歯周病ですが、他の可能性も考えられます。一つは「根尖病巣(こんせんびょうそう)」です。これは、重度のむし歯などで歯の神経が死んでしまい、歯の根の先端に細菌が感染して膿の袋ができてしまう病気です。この膿が、骨を溶かして歯ぐきの表面に出てくることがあります。もう一つは「歯根破折(しこんはせつ)」です。歯の根にヒビが入ったり割れたりすると、その隙間から細菌が侵入し、感染を起こして膿の原因となります。これらの病気は、レントゲン撮影などを行わなければ歯周病と正確に見分けることはできません。いずれにせよ、専門家による精密な診断が不可欠な状態であることに変わりはありません。

 

 

 

 

4. 歯周ポケットの奥で何が起きているのか?

 

 

歯と歯ぐきの溝が深くなるメカニズム

 

健康な状態でも、歯と歯ぐきの間には1〜2mm程度の浅い溝(歯肉溝)があります。しかし、歯磨きが不十分で歯垢(プラーク)が溜まると、歯ぐきに炎症が起こります(歯肉炎)。この炎症が続くと、歯と歯ぐきを結合している組織が破壊され、歯肉溝は徐々に深くなっていきます。これが「歯周ポケット」と呼ばれる状態です。一度形成された歯周ポケットの内部は、歯ブラシの毛先が届かず、汚れが溜まりやすい非常に不衛生な環境となります。このポケットが深ければ深いほど、歯周病が進行している証拠であり、が発生するような場合は、病状がかなり進んだ重症な状態にあることを示唆しています。

 

 

嫌気性菌が繁殖、歯を支える骨を溶かすプロセス

 

深くなった歯周ポケットの内部は、酸素がほとんどないため、「嫌気性菌」と呼ばれる種類の細菌にとって絶好の住処となります。代表的なP.g.菌などの歯周病菌は、この環境で爆発的に増殖し、毒素を出しながらさらに歯ぐきの組織を破壊していきます。そして、この細菌の活動に反応して、私たちの体は免疫細胞を送り込みますが、過剰な免疫反応が、歯を支える大切な骨(歯槽骨)を溶かしてしまうのです。痛みなどの自覚症状がないまま、歯の土台である骨が静かに失われていく。これが歯周病の最も恐ろしい側面です。膿が出る段階では、この骨の破壊がかなり進行していると考えられ、重症と判断される一因となります。

 

 

膿の排出路「サイナストラクト」が形成されるまで

 

歯周ポケットの奥深くで歯周病菌と免疫細胞との激しい戦いが続くと、その残骸であるが大量に溜まっていきます。行き場を失った膿は、内部の圧力を高め、少しでも弱い部分から外に出ようとします。そして、炎症によって破壊された歯ぐきの組織や、溶かされた骨の中を通り抜け、歯ぐきの表面へと続くトンネルを自ら作り出します。この膿の通り道が「サイナストラクト(瘻孔)」であり、その出口が「フィステル」です。つまり、歯ぐきの表面にできたニキビのような膨らみは、氷山の一角に過ぎません。その奥では、歯周病が重症化し、組織の破壊が進んでいるという動かぬ証拠なのです。

 

 

 

 

5. 「膿が出る」は歯周病が進行しているサイン

 

 

歯周病の進行ステージと症状(歯肉炎から重度歯周炎へ)

 

歯周病は、進行度によって大きく4つのステージに分けられます。第1段階は「歯肉炎」で、炎症が歯ぐきに限定されており、主な症状はブラッシング時の出血です。この段階は適切なケアで健康な状態に戻せます。しかし、これが進行し、歯を支える骨が溶け始めると「歯周炎」となり、軽度→中等度→重度と悪化していきます。中等度歯周炎になると、歯周ポケットが4〜6mm程度まで深くなり、歯ぐきを押すと膿が出ることがあります。そして、さらに骨の破壊が進んだ「重度歯周炎」のステージでは、歯がぐらつき始め、膿が頻繁に出るようになります。つまり、「膿が出る」という症状は、病状がすでに中等度以上に進行した重症な状態であることを示しているのです。

 

 

なぜ重症と言えるのか?歯を失うリスクとの直接的な関係

 

歯ぐきから膿が出ることが、なぜ重症なサインと言えるのでしょうか。それは、歯を失うリスクに直結しているからです。歯は、歯槽骨という土台の骨によってしっかりと支えられています。歯周病は、この土台である骨を溶かしてしまう病気です。膿が出ているということは、その内部で活発な細菌感染と強い炎症が起きており、骨の破壊が急速に進行している可能性が高いことを意味します。建物の基礎が腐食すれば建物が傾くように、歯も土台を失えばぐらつき始め、最終的には支えきれずに抜け落ちてしまいます。膿の排出は、この「歯の土台が崩壊し始めている」という危機的な状況を知らせる、体からの紛れもない警告なのです。

 

 

全身疾患への影響も?歯周病菌が血管を通じて全身へ

 

歯周病の問題は、お口の中だけにとどまりません。近年の研究により、歯周病は、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞などの全身疾患との関連が報告されています。重症の歯周病患者様の歯ぐき(特に歯周ポケットの内部)は、常に炎症を起こして潰瘍のようになっているため、歯周病菌やその毒素が血管内に侵入しやすい状態です。血流に乗って全身に運ばれた細菌や毒素は、各地で炎症反応を引き起こし、既存の病気を悪化させたり、新たな病気の発症リスクを高めたりすることが分かっています。歯ぐきから膿が出るほどの状態は、それだけ多くの細菌が体内に侵入するリスクに晒されていることを意味するのです。

 

 

 

 

6. 膿は止められる?歯周病の専門的な治療法

 

 

治療の第一歩、原因を除去する「歯周基本治療」とは

 

歯ぐきから出る膿を止めるための治療は、まずその大元である原因を取り除くことから始まります。これが「歯周基本治療」と呼ばれる、すべての歯周病治療の土台となるステップです。中心となるのは、歯科医師や歯科衛生士が専門的な器具を用いて行う「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」です。スケーリングでは、歯の表面や歯周ポケット内に付着した歯垢や歯石を徹底的に除去します。さらにルートプレーニングで、細菌に汚染された歯の根の表面を滑らかに仕上げ、細菌が再付着しにくい環境を整えます。また、患者様ご自身による日々のセルフケアの質を向上させるためのブラッシング指導も、この基本治療の重要な一環です。

 

 

骨の再生も視野に。重症例に対する「歯周外科治療」

 

歯周基本治療を行っても、歯周ポケットが深く、器具が届かない範囲に汚れが残ってしまう重症のケースでは、次のステップとして「歯周外科治療」が必要となる場合があります。これは、歯ぐきを一時的に開いて、歯の根や骨を直接目で確認しながら、徹底的に清掃する治療法です(フラップ手術)。この治療の利点は、取り残した歯石を確実に除去できることにあります。さらに、歯周病によって失われた骨の形状によっては、「歯周組織再生療法」という先進的な治療を選択できる可能性もあります。これは、特殊な膜や薬剤を用いて、歯を支える骨などの歯周組織の再生を促す治療法です。すべての症例に適応できるわけではありませんが、重症例でも歯を残せる可能性を広げます。

 

 

治療すれば歯は残せる?早期発見・早期治療の重要性

 

「膿が出るほど進行していても、治療すれば歯は残せますか?」これは、多くの患者様が抱く最も切実な疑問でしょう。その答えは、「残せる可能性は十分にありますが、歯を支える骨がどれだけ残っているかによります」というのが実情です。歯周病治療の成否は、いかに早く介入し、骨の破壊を食い止められるかにかかっています。歯ぐきから膿が出ている状態は、すでに病状が重症化しているサインですが、決して手遅れとは限りません。しかし、この瞬間も歯を支える骨は溶かされ続けています。このサインに気づいた今、一日でも早く専門的な治療を開始することが、あなたの大切な歯を守るための最善かつ唯一の方法なのです。

 

 

 

 

7. 自己判断は危険!膿が出た時に絶対にしてはいけないこと

 

 

自分で膿を無理に潰す、針で刺すなどの行為

 

歯ぐきがぷっくりと腫れているのを見ると、ニキビを潰すような感覚で、つい指で強く押したり、針のようなもので刺して膿を出したくなるかもしれません。しかし、このような行為は絶対に避けてください。無理に圧力をかけると、細菌や膿を歯ぐきのさらに奥深くへと押し込んでしまい、感染を拡大させる危険性があります。また、殺菌されていない器具で歯ぐきを傷つけると、そこから新たな細菌が侵入し、二次感染を引き起こす可能性も否定できません。一時的に膿が出て楽になったように感じても、根本原因は解決しておらず、より重症な事態を招きかねない危険な行為です。

 

 

市販の痛み止めや抗生物質で様子を見ることのリスク

 

痛みがある場合、市販の痛み止めを服用して一時的に症状を和らげることはあるかもしれません。しかし、これはあくまで対症療法であり、膿の原因である細菌感染そのものを治しているわけではありません。痛みが和らぐことで「治った」と錯覚し、歯科医院への受診が遅れてしまうと、その間に歯周病は静かに進行してしまいます。また、以前処方された抗生物質が残っているからといって、自己判断で服用するのは大変危険です。歯周病の原因は物理的な汚れ(歯石など)に潜んでいるため、薬だけでは根本治療になりません。不適切な抗生物質の使用は、薬の効かない耐性菌を生み出すリスクもあり、専門的な治療をより困難にしてしまう可能性があります。

 

 

歯磨きを怖がり、患部を不潔にしてしまうこと

 

歯ぐきが腫れていたり、出血したり、膿が出たりしていると、歯ブラシを当てるのが怖く感じるのは自然なことです。しかし、だからといってその部分の清掃を完全に避けてしまうと、逆効果になります。お口の中は細菌だらけであり、清掃を怠ればプラーク(歯垢)がさらに蓄積し、細菌の温床となります。これは、炎症をさらに悪化させ、歯周病の進行を早めてしまうことに他なりません。患部を磨く際は、毛先の柔らかい歯ブラシを選び、決してゴシゴシと強く擦るのではなく、優しく丁寧に汚れを掻き出すように磨きましょう。適切なブラッシングは、重症化を防ぎ、専門的な治療効果を高める上でも非常に重要です。

 

 

 

 

8. 専門医に相談を。信頼できる歯科医院の選び方

 

 

歯周病の診断に必要な精密検査(歯周ポケット検査・レントゲン等)

 

歯ぐきから膿が出ている場合、その原因を正確に突き止めるためには精密な検査が不可欠です。信頼できる歯科医院は、まず丁寧な検査から始めます。基本となるのが、目盛りのついた細い器具で歯と歯ぐきの間の溝の深さを測る「歯周ポケット検査」です。これにより歯周病の進行度を客観的に把握します。また、外からでは見えない歯を支える骨の状態を確認するために「レントゲン撮影」も必須です。骨がどの程度失われているかを見ることで、重症度を正確に診断できます。これらの基本的な検査をしっかりと行い、その結果を基に診断を説明してくれる医院は、科学的根拠に基づいた治療を実践している証拠と言えるでしょう。

 

 

日本歯周病学会認定医・専門医という一つの指標

 

歯周病は、その治療に高度な専門知識と技術が求められる分野です。特に、膿が出るような重症のケースでは、より専門性の高い歯科医師による診断や治療が望まれます。その際の一つの客観的な指標となるのが、「日本歯周病学会」が認定する「認定医」や「専門医」の資格です。これらの資格は、学会が定める厳しい基準を満たし、十分な経験と学識、そして優れた技量を持つと認められた歯科医師にのみ与えられます。もちろん、この資格がなくとも優れた先生は多くいらっしゃいますが、医院選びに迷った際には、こうした専門資格を持つ歯科医師が在籍しているかどうかを参考にしてみるのも良い方法です。

 

 

治療計画を丁寧に説明し、カウンセリングを重視する姿勢

 

重症の歯周病であると告げられれば、誰でも不安になるものです。そんな患者様の気持ちに寄り添い、丁寧なコミュニケーションを大切にしてくれるかどうかも、信頼できる医院の重要な条件です。検査結果だけを伝えるのではなく、レントゲン写真などを見せながら、現在のお口の状態を分かりやすく説明してくれること。そして、考えられる治療法の選択肢、それぞれのメリット・デメリット、治療期間や費用について具体的に提示し、患者様が納得して治療を選べるようにサポートしてくれる姿勢が求められます。治療は歯科医師と患者様の二人三脚で進めるものです。あなたの質問や不安に真摯に耳を傾けてくれる、パートナーとして信頼できる歯科医師を見つけることが大切です。

 

 

 

 

9. 歯ぐきの膿と歯周病治療に関するよくあるご質問(FAQ)

 

 

Q. 歯周病の治療は痛いですか?麻酔は使えますか?

 

A. 治療に伴う痛みがご不安な方は、非常に多くいらっしゃいますのでご安心ください。歯周病の治療、特に歯周ポケットの奥深くを清掃する際には、痛みを伴う可能性のある処置に対しては、局所麻酔を適切に使用します。麻酔が効いている間は、触られている感覚や振動はあっても、鋭い痛みを感じることはありません。治療後、麻酔が切れた後に多少の痛みや歯ぐきの違和感が出ることがありますが、通常は処方される痛み止めで十分にコントロールできる範囲です。重症な状態ほど処置が複雑になる可能性はありますが、歯科医師は患者様の負担を最小限に抑えるよう常に配慮していますので、痛みへの不安は遠慮なくお伝えください。

 

 

Q. 抗生物質や市販の塗り薬だけで治りますか?

 

A. 残念ながら、抗生物質や市販薬だけで歯周病が根本的に治ることはありません。歯ぐきから膿が出るような重症な場合、感染を抑えるために一時的に抗生物質が処方されることはありますが、これはあくまで補助的な役割です。歯周病の根本原因は、歯の根に物理的にこびり付いた歯石やプラーク(細菌の塊)だからです。この原因菌の住処を専門的な器具で徹底的に除去しない限り、薬の服用を終えれば細菌は再び増殖し、症状は再発します。市販の塗り薬も、表面的な歯ぐきの炎症を一時的に和らげる効果しか期待できず、根本解決には至りません。

 

 

Q. 治療にかかる期間と費用の目安を教えてください。

 

A. 治療期間や費用は、歯周病の進行度(重症度)や治療が必要な歯の本数、そして選択される治療法によって大きく異なるため、一概にお伝えすることは困難です。一般的な流れとして、歯周基本治療(検査、歯石除去、ブラッシング指導など)は、数回の通院で1〜2ヶ月程度かかることが多いです。外科治療が必要な場合は、さらに期間を要します。費用に関しては、歯周基本治療や歯周外科治療の多くは健康保険が適用されます。ただし、歯周組織再生療法などの先進的な治療は自費診療となる場合があります。正確な期間と費用については、精密検査と診断の上で、治療計画と共にご提示させていただきます。

 

 

Q. 治療後、膿が出ないように自分で予防できますか?

 

A. はい、治療後の良好な状態を維持し、膿の再発を防ぐためには、患者様ご自身のセルフケアが最も重要になります。治療によって一度クリーンになったお口の環境も、日々のケアを怠れば再び細菌が繁殖し、歯周病は再発してしまいます。歯科医院で指導された正しいブラッシング方法や、デンタルフロス、歯間ブラシを用いた歯と歯ぐきの間の清掃を毎日丁寧に行うことが、予防の基本です。それに加えて、セルフケアだけでは落としきれない汚れを除去し、お口の状態を専門的にチェックしてもらうための「定期メンテナンス」が不可欠です。ご自身のケアとプロのケア、この両輪で再発を防ぎます。

 

 

 

 

10. まとめ:膿は体からのSOS。放置せず、健康な未来への一歩を

 

 

膿というサインを正しく受け止め、行動することの価値

 

この記事を通じて、歯ぐきから出る膿が、単なる小さな吹き出物ではなく、体が発する重大なSOSサインであることをご理解いただけたかと思います。そのサインは、内部で歯周病が重症化し、歯を支える骨が溶かされているという危機的な状況を伝えています。このサインを見て見ぬふりをするのは、火災報知器が鳴っているのに「そのうち鳴り止むだろう」と放置するのと同じです。このサインを正しく受け止め、勇気を出して歯科医院の扉を叩くという「行動」こそが、最悪の事態である抜歯を回避し、あなた自身の歯を守るための最も価値ある選択なのです。

 

 

歯を残すための治療から、お口全体の健康を守る予防へ

 

歯ぐきから膿が出ている状態への最初の対応は、もちろん原因である重症の歯周病を食い止めるための「治療」です。しかし、治療の成功はゴールではありません。それは、お口の健康に対する意識をリセットし、新たなスタートを切るための絶好の機会です。これからは、問題が起きてから対処する「治療」中心の考え方から、問題が起きないように管理する「予防」中心の考え方へとシフトしていくことが重要です。治療で取り戻した健康な状態を、日々の丁寧なセルフケアと、歯科医院での定期的なプロのメンテナンスによって維持していく。この好循環こそが、生涯にわたってご自身の歯で美味しく食事を楽しむための鍵となります。

 

 

不安な気持ちに寄り添う、歯科医院とのパートナーシップ

 

歯ぐきから膿が出ているという事実に、大きな不安を感じ、歯科医院へ行くことに恐怖心を抱いている方もいらっしゃるかもしれません。そのお気持ちは、決して特別なことではありません。私たちは、そんな患者様の不安な気持ちにまず寄り添うことを大切にしています。歯科医院は、単に治療を行う場所ではなく、患者様が健康な未来を築いていくための「パートナー」であるべきだと考えています。どんな些細なことでもご相談ください。私たちはあなたの話に真摯に耳を傾け、最善の道を一緒に探していきます。一人で悩まず、まずはその一歩を踏み出してみませんか。

 

 

 

 

 

監修:医療法人社団 櫻雅会
   オリオン歯科医院
住所:千葉県白井市大松1丁目22-11
電話番号 ☎:047-491-4618

*監修者
医療法人社団 櫻雅会 オリオン歯科医院
ドクター 櫻田 雅彦
*出身大学
  神奈川歯科大学
略歴
・1993年 神奈川歯科大学 歯学部
     日本大学歯学部大学院博士課程修了 歯学博士
・1997年 オリオン歯科医院開院
・2004年 TFTビル オリオンデンタルオフィス開院
・2005年 オリオン歯科 イオン鎌ヶ谷クリニック開院
・2012年 オリオン歯科 飯田橋ファーストビルクリニック開院
・2012年 オリオン歯科 NBFコモディオ汐留クリニック開院
・2015年 オリオン歯科 アトラスブランズタワー三河島クリニック 開院
*略歴
インディアナ大学 JIP-IU 客員教授
・コロンビア大学歯学部インプラント科 客員教授

・コロンビア大学附属病院インプラントセンター 顧問
ICOI(国際口腔インプラント学会)定医
・アジア太平洋地区副会長
・AIAI(国際口腔インプラント学会)指導医
・UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)インプラントアソシエーションジャパン 理事
・AO(アメリカインプラント学会)インターナショナルメンバー
・AAP(アメリカ歯周病学会)インターナショナルメンバー
・BIOMET 3i インプラントメンター(講師) エクセレントDr.賞受賞
・BioHorizons インプラントメンター(講師)
日本歯科医師会
日本口腔インプラント学会
日本歯周病学会
日本臨床歯周病学会 認定医
ICD 国際歯科学士会日本部会 フェロー
JAID(Japanese Academy for International Dentistry) 常任理事