歯周病治療・歯周外科治療
歯周病とは
歯周病は、歯周ポケットに潜む細菌による慢性の感染症です。
人の体は皮膚で覆われているため、傷がつかない限り細菌が侵入することはありません。しかし、体の中で唯一骨と直接つながっている歯肉部分は、細菌が侵入しやすい場所です。特に、歯の付け根は軟組織で穴が開いているため、細菌が付着すると体の中にすぐに侵入します。
細菌が侵入しても初めは症状がほとんどでませんが、慢性期が長期間続くと細菌を体の中に入れないための防御反応として炎症が起こります。それが歯周病です。
歯周病が原因で高血圧や心筋梗塞、糖尿病、脳梗塞を発症するリスクがあるため、歯周病予防が必要となります。
歯周病の全貌:根本から理解しよう
歯周病が起こる過程
歯周病の影響
歯周病と口腔内の健康
歯周病の謎を解く:その原因を深堀り
プラークとターター:隠れた敵を知る
遺伝と環境因子:リスクを高めるもの
喫煙とアルコール:歯周病への追い風
当院の歯周病治療の特徴
歯周病は、治療後のメンテナンスが重要です。当院では担当歯科衛生士制を導入し、患者さんの口腔環境を健康な状態に維持できるよう、歯周病が再発しないよう予防治療を徹底しています。 むし歯や歯周病の予防治療を専門に学んだエキスパートの歯科衛生士が口腔内のクリーニングを担当し、定期メンテナンス時に丁寧にお口の中を確認いたします。 できるだけ痛みが出ないように配慮しながらクリーニングやケアを行いますが、もしも痛みがある場合には遠慮なくお伝えください。 治療後は受付にて患者さんに治療内容についてのご感想をお聞かせいただいております。担当歯科衛生士制を導入しておりますが、時には患者さんと担当者の相性が合わない場合もあります。そのようなときには担当を変更することも可能ですから、遠慮なくお申し出ください。年齢に応じた健康な歯ぐきとは
30 代患者さんの健康な歯ぐきは歯肉は薄いピンク色。歯と歯の間の歯肉はきれいな三角形です。
50代になると歯肉のピンク部分が少なくなりますが、歯と歯の間の歯肉の形は三角形を保ちます。歯と歯の間に多少隙間が出来始めますが、衛生的な環境を維持すれば綺麗な口腔環境が保てます。
70代になると前歯の上下の歯肉に隙間が見られるようになりますが、衛生的な環境を維持すれば歯肉がピンク色の引き締まった状態を維持することが出来ます。
歯と歯の間の歯肉に隙間が見られるようになりますが、衛生的な環境を維持すれば歯肉もきれいな淡いピンク色を保てます。歯肉も引き締め、歯周ポケットも3mm以内に収めることが可能です。
歯周病の早期警告信号:見逃さないために
歯肉の変化:赤み、腫れ、出血のサイン
不快な口臭と味覚の変化:予想外の警告信号
歯の動きと歯並びの変化:見逃しやすい症状
歯周病の進行とその影響:あなたの口腔健康の全体像
歯周病の進行段階:病状の進行と特徴
歯周病から歯喪失へ:深刻な結果の可能性
歯周病と自己評価:あなた自身の役割
歯周病の種類と各病状の特徴:深く理解するために
歯肉炎と歯周病:初期症状から進行状態へ
重度の歯周病:慢性歯周病と急性歯周病
妊娠と歯周病:特別なリスクの理解
歯周病の症状
歯ぐきの腫れ・出血が気になる方へ
- 症状 歯周ポケットがすこし出来始めた状態で来院されました。歯の揺れ幅も1mm以内だったため、歯石の除去と歯磨き指導を行い、自宅で丁寧に歯磨きをしていただいた。
- 使用した物 患者さんの口腔環境にあった適切な歯ブラシ
- 治療期間 おおむね1、2ヶ月
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 50,000円 (税込み) ※症状によって金額が異なることがございます。
歯がぐらぐらしている方へ
重度歯周病の治療例
治療前
治療後
- 症状 重度の歯周炎により上顎の歯が全て外向きにひらき歯間が開いた状態で来院されました。
- 治療方法 下顎臼歯部(下奥歯)を抜歯した状態のままになっておりましたので、前歯が強くあたり、歯周病も重なり前歯が開いてしまっていました。下奥歯欠損部はインプラントによる治療、また開いてしまった上顎は矯正により元の位置に戻しました。下に入れたインプラントにより全ての歯が均一に噛み合うようになり、歯周病の治療もスムーズに行えました。
- 使用した物 歯周病治療にプラスしてインプラント治療を行いました。(歯周病の周りの歯を連鎖的に悪くさせたいため)
- 治療期間 1年
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。また、歯周病の存在が周りの歯に悪い影響を与えるため、無理に残すと他の歯にも影響を与えてしまいます。この患者さんは、連鎖の可能性が高い歯も同時に抜歯をされたため、歯周病のリスクは回避できました。
- 金額 2,000,000円 (税込み)
治療例 2
治療前
治療後
- 症状 重度歯周炎により下顎前歯が動揺して来院されました。
- 治療方法 下顎前歯4本は動揺が著しく、歯並びが悪くメンテナンスが上手くできない状態でしたので抜歯させていただきました。抜歯後、歯肉の退縮を最小限に抑える為、ソケットプリザベーションにより人工の骨を填入、平らでメンテナンスのしやすい状態にし、その後ブリッジの製作を行いました。
- 使用した物 ソケットブリザベーション(インプラント治療)※治療後15年経過の状態
- 治療期間 4ヶ月
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 400,000円 (税込み) ※症状によって金額が異なることがございます。
治療例 3
治療前
治療後
- 症状 歯の動揺と隙間が広くなってきた事を気にされて来院されました。
- 治療方法 左下奥歯(臼歯)は欠損したままになっておりましたのでインプラントによる欠損部の治療を行いました。欠損部にインプラントを入れるだけの充分な骨量がありませんでしたが、残存歯の負担をなるべく少なくするため、インプラント治療を行っています。その他歯周病治療を行っておりますが、上顎正中は歯槽骨の欠損が大きかった為、エムドゲイン法による再生治療も行っています。
- 使用した物 再生療法 ※治療後20年以上経過した状態
- 治療期間 4ヶ月
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 50,000円〜200,000円 (税込み) ※症状によって金額が異なることがございます。
歯周病の診断:検査と評価を理解する
初期診察:視覚検査とX線
歯周ポケットの測定
歯周病の進行度評価
歯周外科治療とは
歯周外科治療とは、歯周病に対する治療や抜歯を避け、歯を残すための再生療法のことです。破壊された歯の周囲の組織や骨の再生を促します。
歯周病の治療:非外科的介入から外科的手術まで
スケーリングとルートプレーニング
歯周フラップ手術
再生手術とインプラント
治療方法
【エムドゲイン法】
歯周ポケットの改善や歯槽骨の再生を促すための治療です。 むし歯などの治療が終わった段階で、歯周ポケットが6mm以上ある場合、エムドゲインによる再生療法を行います。 歯肉を切開して歯根を露出させます。歯根表面の歯石を除去した後、汚れを徹底的に取り除き、エムドゲインを塗布します。その後、歯肉弁を戻し縫合します。【歯肉弁根尖側移動術】
歯肉が狭い場合や歯周ポケットが深い場合に行う外科手術です。 むし歯が歯槽骨の近くまで達している場合でも、歯肉の位置を下げて歯を長く露出させ治療することで歯を残すことが可能です。また、歯ぐきの位置がばらばらで一定していない方の審美治療としても利用できます。【根面被覆術】
歯肉退縮(歯ぐきが下がること)のため露出した歯根面を覆う治療方法です。 歯肉を移植し縫合することで、露出していた歯根を覆い歯ぐきを短くできます。もともと歯ぐきの長さがバラバラの方の審美治療としても有効です。【PAOO(即時矯正)】
矯正治療時の歯の移動を、効率よく短期間で行う治療方法です。歯の移動を行う場合に歯槽骨(歯ぐきの骨)に切れ目を入れて歯を動かしやすくします。歯の移動と骨再生を同時に行うことで、治療期間の短縮と歯槽骨の増大が見込まれます。治療例
治療前
治療後
- 症状 歯周病により、歯周ポケットが深くなり、歯がグラグラし始めたので来院されました。
- 治療方法 エムドゲイン法で、片側の歯槽骨の再生を促す治療を行いました。
- 使用した物 エムドゲイン液の塗布。
- 治療期間 おおむね半年
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 200,000円 (税込み)
◎歯肉弁根尖側移動術 (APF – Apically Positioned Flap surgery) 歯周病に侵された歯肉を除去し歯周病の進行を食い止める手術です。歯周ポケットが浅くなり、歯周病原菌が繁殖しづらい環境を作ります。
治療前
治療後
- 症状 歯周病治療のため来院されました。歯周病が悪化し歯周ポケットが深くなり、歯肉の位置も上下バラバラに見える状態です。
- 治療方法 上顎前歯のブリッジを取り外し、歯肉を切開しました。歯周ポケットがなくなったことで口腔環境は大幅に改善しました。最後にオールセラミックスのブリッジを装着して完了です。
- 使用した物 オールセラミックスのブリッジ
- 治療期間 おおむね半年
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 200,000円 (税込み)
◎根面被覆術 歯周病が進行すると、歯を支える歯周組織が破壊され、歯ぐきは後退して歯が長くなったように見えます。歯周病が治った後もこの後退した歯ぐきは元に戻らないため、笑ったときの見栄えを気にされる方も多くいらっしゃいます。根面被覆術は歯肉を移植して見栄えを改善する手術です。
治療前
治療後
- 症状 歯周ポケットの一部がかなり深くなった状態で歯根が露出し、歯肉もなくなり菌が繁殖している状態です。
- 治療方法 歯肉を移植して縫合した後、露出していた歯根を覆う根面被覆術を行いました。
- 使用した物 オールセラミックスの被せ物
- 治療期間 おおむね半年
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 200,000円 (税込み)
治療前
治療後
- 症状 歯並びや噛み合わせが悪い状態です。歯周ポケットが深く、歯周病が悪化している状態で来院されました。
- 治療方法 歯の移動を効率よく短期間で行うためにPAOO(即時矯正)で対応しました。歯が適切に移動できるように歯槽骨(歯ぐきの骨)に切れ目を入れ、歯の移動と骨再生を同時に行い、短期間で矯正治療が完了できました。
- 使用した物 即時抜歯矯正治療のみ
- 治療期間 おおむね半年
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 200,000円 (税込み)
歯周病予防のためのホームケア
正しいブラッシングとフロッシングの手法
口腔衛生製品の選択
定期的な歯科検診
歯周病と全身の健康:歯周病と他の病気との関連
歯周病と心臓病、糖尿病のリンク
歯周病と妊娠、出産のリスク
歯周病とアルツハイマー病
歯周病と栄養:食事で何ができるか
歯周病予防のための栄養素
ダイエットと口腔内環境
サプリメントの役割
歯周病とストレス:心理的な要素の影響
ストレスと免疫システム
マインドフルネスとリラクゼーション
ストレス対処法と予防策
歯周病の専門家:誰に相談すべきか
一般歯科医と歯周病専門医
歯科衛生士の役割
専門的なケアとセカンドオピニオン
歯周病治療の最新技術:何が利用可能か
レーザー治療とその効果
バイオテクノロジーと再生医療
最新の予防策と製品
歯周病のコスト:保険と治療費用について理解する
治療費の見積もりと予算設定
健康保険の適用と自己負担
費用効果の最大化
歯周病治療後の生活:維持ケアと再発防止
メンテナンスと定期検診
歯周病の再発とその防止
健康な口腔環境の維持
インプラントと歯周病の関連性について
何らかの理由で歯が失われた時、すぐに噛む能力を取り戻す治療が求められます。そのためには入れ歯、ブリッジ、インプラントなどの補綴治療が利用可能で、インプラントは特に自然な見た目と機能性を提供する高度な治療法として注目されています。しかし、歯周病により歯が失われた際には、インプラント治療が困難な場合があるため、患者が希望する治療が実現できないこともあります。
では、歯周病とインプラント治療との間には何が関連性があるのでしょうか?
歯の失われ方がインプラント治療の適用に影響する?
しかし、歯を失った原因によっては…
ただし、歯を失った原因によっては、インプラント治療が難しくなることもあります。
インプラントは顎の骨に人工の歯根(インプラント体)を埋入することで歯の根の役割を果たします。しかし、歯周病により顎の骨が大幅に吸収された場合、インプラント体を支えるための骨の量が不足してしまいます。虫歯は、歯が溶ける病気なので歯槽骨には影響がないのですが、歯周病は歯そのものの病気ではなく、歯を支える歯ぐきや歯槽骨に炎症が起こる病気です。そのため、重度の歯周病で歯槽骨が大幅に吸収されている方は、インプラント治療が難しいとされ、インプラント以外の治療法を選ぶことが必要になることがあります。つまり、顎の骨が強固でなければ、インプラント体を支える事が難しいのです。しかし、全ての歯周病患者さんがインプラント治療ができないというわけではありません。軽度の歯周病患者は、まず歯周病治療を行った後にインプラント治療に進むことが可能です。さらに、重度の歯周病患者でも、インプラント技術の進歩により、顎の骨量を増やす手段を取ることで、インプラント治療を選択することが可能となりました。しかし、技術の進歩にも関わらず、原因となる歯周病を適切に治療しなければ、容易にインプラント治療は実行できません。虫歯は一本の歯だけが影響を受けますが、歯周病は口腔全体に影響を及ぼすため、虫歯と比較してすぐに治療できるわけではないのです。そのため、定期的に歯科医院を訪れ、歯石を除去したりクリーニングを受けたりし、歯周病の進行を抑えることが重要です。
インプラント治療後の注意点
また、歯周病患者は、インプラント治療後も特別な注意が必要です。インプラント治療後によく見られる問題の一つが、「インプラント周囲炎」です。これは歯周病と似た症状で、歯周病菌がインプラント体の周囲に炎症を起こすものです。この「インプラント周囲炎」は、歯周病菌により引き起こされ、放置するとインプラントの安定性に影響を及ぼす可能性があります。したがって、インプラント治療を受けた後も、口腔衛生には十分な注意を払う必要があります。通常の歯周病と同様に、インプラント周囲炎も初期段階であれば治療が可能です。しかし、炎症が進行し、顎の骨へと広がると、インプラント体の安定性が低下し、最悪の場合、インプラント体が外れることさえあります。歯周病のリスクを低減するためには、インプラント治療の前後における口腔内ケアが不可欠です。その中でも特に重要なのは、定期的な歯科診察とプロフェッショナルなクリーニングです。これにより、歯周病菌の繁殖を抑制し、健康な口腔環境を保つことが可能になります。また、日々の口腔ケアも重要です。適切なブラッシングとフロッシングを行い、口腔内の清潔さを保つことで、歯周病の発症を防ぎます。
まとめ
結論として、インプラント治療は非常に有効な補綴治療法ですが、歯周病の存在はその適応を制限することがあります。しかし、適切な治療と継続的な口腔ケアにより、歯周病をコントロールし、成功的なインプラント治療を達成することが可能です。そのため、あなたがインプラント治療を検討している場合でも、まずは歯周病の状態を評価し、必要な治療を受けることが重要です。そして、治療後も口腔衛生の維持に努めることが求められます。インプラント治療は高度な技術を必要としますが、その成功はあなた自身の口腔ケアに大きく依存します。定期的な歯科診察と日常的な口腔衛生管理は、インプラントの持続性と機能性を確保する上で絶対に必要です。歯周病を予防し、適切に管理することで、インプラント治療の成功率を高め、口腔内の健康を維持することができます。そして、これらの努力により、食事や会話など日常生活の質を向上させることができます。
歯周病と歯列矯正治療
以前より歯周病の分野において、「歯並びが整っていない(不正咬合)とプラークコントロールが困難になり、歯周病の進行を早める」と考えられてきました。歯周病が進行するにつれて、病的な歯の移動が自然に起き、歯の並びも乱れてしまいます。
これにより、歯列矯正治療が歯周病治療の一部として認識されるきっかけとなったのです。
この考え方から、「歯周病を伴う患者さまの矯正治療」を”歯周矯正治療”と呼ぶようになりました。歯周病を伴う患者さまが歯を適切な位置に移動させることで、咬合力(咬む力)の負担が適切に分散され、周囲の骨の一部が再生するなど、近年では「歯周矯正治療」が歯周治療後の歯周組織の安定に貢献するとの報告が増えてきました。
しかし、歯周病で病的な歯の移動が起こった歯並びを無闇に矯正すべきかと言うと、答えは否です。
歯周炎患者(歯肉炎を除く)を対象とした研究によれば、「歯周ポケット(4mm以上)がある歯を動かす場合、ポケット内にプラークや歯石が存在すると、矯正力が歯周病原因菌の活動を増加させ、歯周病をさらに悪化させる」と報告されています。
プラークコントロールがカギとなります
ただし、これは全ての歯周病患者に矯正治療が不可能であることを意味するものではありません。歯周病治療後、状態が安定していれば、適度な力を用いて行えば、特に歯周病を悪化させる(周囲の骨を失うリスクを増加させる)わけではないという報告もあります。
これを踏まえて、実際の歯周矯正では、矯正治療前に歯周病の診断と治療を行い、治療中は一般の矯正患者以上にプラーク管理に気を付ける必要があることを覚えておくべきでしょう。
「歯周矯正治療」の流れは、まず歯周病の診察・診断から始まり、歯周治療を優先します。歯周ポケット内の歯周病菌を減少させ、歯周組織の安定が確認できてから歯周矯正治療を開始します。もちろん、治療中だけでなく、治療後も歯周病の再発リスクがあるため、定期的に来院してメンテナンスを行い、並行して歯並びの管理も行います。
この説明から、歯周病がコントロールされていない状況で、不注意に矯正力を適用すると歯周病がさらに悪化する可能性があることを理解していただけたと思います。
重度の歯周病では、矯正力の影響について考えるよりも前にすでに多くの周囲の支持骨が失われております。そのため、歯をきれいに並べることは可能ですが、咬合力に耐えられる環境が保てない場合、最終的に抜歯が必要になることもあります。
歯周病の進行が重度であるほど歯の移動は容易ですが、それだけで全体の歯列の問題を解決できない場合もあります。そのため、「歯周矯正治療」では、以下に示すような”多様な治療オプションを含む選択肢”を考慮することが非常に重要です。
ですが、「歯周矯正治療」は、矯正治療だけでなく他の知識や治療技術も必要な複雑な領域であり、大学を含む矯正歯科での取り扱いが不明確で、患者さまが行き場を失っている状況がしばしば見られますのも現状です。
歯周矯正治療の際に考慮すべき事項とは?
歯周病とは
歯周病は、歯周ポケットに潜む細菌による慢性の感染症です。 人の体は皮膚で覆われているため、傷がつかない限り細菌が侵入することはありません。しかし、体の中で唯一骨と直接つながっている歯肉部分は、細菌が侵入しやすい場所です。特に、歯の付け根は軟組織で穴が開いているため、細菌が付着すると体の中にすぐに侵入します。 細菌が侵入しても初めは症状がほとんどでませんが、慢性期が長期間続くと細菌を体の中に入れないための防御反応として炎症が起こります。それが歯周病です。 歯周病が原因で高血圧や心筋梗塞、糖尿病、脳梗塞を発症するリスクがあるため、歯周病予防が必要となります。1.歯周病の全貌:根本から理解しよう
歯がぐらぐらしている方へ
当院の歯周病治療の特徴
歯周病は、治療後のメンテナンスが重要です。当院では担当歯科衛生士制を導入し、患者さんの口腔環境を健康な状態に維持できるよう、歯周病が再発しないよう予防治療を徹底しています。 むし歯や歯周病の予防治療を専門に学んだエキスパートの歯科衛生士が口腔内のクリーニングを担当し、定期メンテナンス時に丁寧にお口の中を確認いたします。 できるだけ痛みが出ないように配慮しながらクリーニングやケアを行いますが、もしも痛みがある場合には遠慮なくお伝えください。 治療後は受付にて患者さんに治療内容についてのご感想をお聞かせいただいております。担当歯科衛生士制を導入しておりますが、時には患者さんと担当者の相性が合わない場合もあります。そのようなときには担当を変更することも可能ですから、遠慮なくお申し出ください。年齢に応じた健康な歯ぐきとは
30 代患者さんの健康な歯ぐきは歯肉は薄いピンク色。歯と歯の間の歯肉はきれいな三角形です。 50代になると歯肉のピンク部分が少なくなりますが、歯と歯の間の歯肉の形は三角形を保ちます。歯と歯の間に多少隙間が出来始めますが、衛生的な環境を維持すれば綺麗な口腔環境が保てます。 70代になると前歯の上下の歯肉に隙間が見られるようになりますが、衛生的な環境を維持すれば歯肉がピンク色の引き締まった状態を維持することが出来ます。 歯と歯の間の歯肉に隙間が見られるようになりますが、衛生的な環境を維持すれば歯肉もきれいな淡いピンク色を保てます。歯肉も引き締め、歯周ポケットも3mm以内に収めることが可能です。歯周病の症状
歯ぐきの腫れ・出血が気になる方へ
- 症状 歯周ポケットがすこし出来始めた状態で来院されました。歯の揺れ幅も1mm以内だったため、歯石の除去と歯磨き指導を行い、自宅で丁寧に歯磨きをしていただいた。
- 使用した物 患者さんの口腔環境にあった適切な歯ブラシ
- 治療期間 おおむね1、2ヶ月
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 50,000円 (税込み) ※症状によって金額が異なることがございます。
歯がぐらぐらしている方へ
重度歯周病の治療例
治療前
治療後
- 症状 重度の歯周炎により上顎の歯が全て外向きにひらき歯間が開いた状態で来院されました。
- 治療方法 下顎臼歯部(下奥歯)を抜歯した状態のままになっておりましたので、前歯が強くあたり、歯周病も重なり前歯が開いてしまっていました。下奥歯欠損部はインプラントによる治療、また開いてしまった上顎は矯正により元の位置に戻しました。下に入れたインプラントにより全ての歯が均一に噛み合うようになり、歯周病の治療もスムーズに行えました。
- 使用した物 歯周病治療にプラスしてインプラント治療を行いました。(歯周病の周りの歯を連鎖的に悪くさせたいため)
- 治療期間 1年
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。また、歯周病の存在が周りの歯に悪い影響を与えるため、無理に残すと他の歯にも影響を与えてしまいます。この患者さんは、連鎖の可能性が高い歯も同時に抜歯をされたため、歯周病のリスクは回避できました。
- 金額 2,000,000円 (税込み)
治療例 2
治療前
治療後
- 症状 重度歯周炎により下顎前歯が動揺して来院されました。
- 治療方法 下顎前歯4本は動揺が著しく、歯並びが悪くメンテナンスが上手くできない状態でしたので抜歯させていただきました。抜歯後、歯肉の退縮を最小限に抑える為、ソケットプリザベーションにより人工の骨を填入、平らでメンテナンスのしやすい状態にし、その後ブリッジの製作を行いました。
- 使用した物 ソケットブリザベーション(インプラント治療)※治療後15年経過の状態
- 治療期間 4ヶ月
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 400,000円 (税込み) ※症状によって金額が異なることがございます。
治療例 3
治療前
治療後
-
- 症状 歯の動揺と隙間が広くなってきた事を気にされて来院されました。
- 治療方法 左下奥歯(臼歯)は欠損したままになっておりましたのでインプラントによる欠損部の治療を行いました。欠損部にインプラントを入れるだけの充分な骨量がありませんでしたが、残存歯の負担をなるべく少なくするため、インプラント治療を行っています。その他歯周病治療を行っておりますが、上顎正中は歯槽骨の欠損が大きかった為、エムドゲイン法による再生治療も行っています。
- 使用した物 再生療法 ※治療後20年以上経過した状態
- 治療期間 4ヶ月
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 50,000円〜200,000円 (税込み) ※症状によって金額が異なることがございます。
歯周外科治療とは
歯周外科治療とは、歯周病に対する治療や抜歯を避け、歯を残すための再生療法のことです。破壊された歯の周囲の組織や骨の再生を促します。治療方法
【エムドゲイン法】
歯周ポケットの改善や歯槽骨の再生を促すための治療です。 むし歯などの治療が終わった段階で、歯周ポケットが6mm以上ある場合、エムドゲインによる再生療法を行います。 歯肉を切開して歯根を露出させます。歯根表面の歯石を除去した後、汚れを徹底的に取り除き、エムドゲインを塗布します。その後、歯肉弁を戻し縫合します。【歯肉弁根尖側移動術】
歯肉が狭い場合や歯周ポケットが深い場合に行う外科手術です。 むし歯が歯槽骨の近くまで達している場合でも、歯肉の位置を下げて歯を長く露出させ治療することで歯を残すことが可能です。また、歯ぐきの位置がばらばらで一定していない方の審美治療としても利用できます。【根面被覆術】
歯肉退縮(歯ぐきが下がること)のため露出した歯根面を覆う治療方法です。 歯肉を移植し縫合することで、露出していた歯根を覆い歯ぐきを短くできます。もともと歯ぐきの長さがバラバラの方の審美治療としても有効です。【PAOO(即時矯正)】
矯正治療時の歯の移動を、効率よく短期間で行う治療方法です。歯の移動を行う場合に歯槽骨(歯ぐきの骨)に切れ目を入れて歯を動かしやすくします。歯の移動と骨再生を同時に行うことで、治療期間の短縮と歯槽骨の増大が見込まれます。治療例
治療前
治療後
- 症状 歯周病により、歯周ポケットが深くなり、歯がグラグラし始めたので来院されました。
- 治療方法 エムドゲイン法で、片側の歯槽骨の再生を促す治療を行いました。
- 使用した物 エムドゲイン液の塗布。
- 治療期間 おおむね半年
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 200,000円 (税込み)
◎歯肉弁根尖側移動術 (APF – Apically Positioned Flap surgery) 歯周病に侵された歯肉を除去し歯周病の進行を食い止める手術です。歯周ポケットが浅くなり、歯周病原菌が繁殖しづらい環境を作ります。
治療前
治療後
- 症状 歯周病治療のため来院されました。歯周病が悪化し歯周ポケットが深くなり、歯肉の位置も上下バラバラに見える状態です。
- 治療方法 上顎前歯のブリッジを取り外し、歯肉を切開しました。歯周ポケットがなくなったことで口腔環境は大幅に改善しました。最後にオールセラミックスのブリッジを装着して完了です。
- 使用した物 オールセラミックスのブリッジ
- 治療期間 おおむね半年
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 200,000円 (税込み)
◎根面被覆術 歯周病が進行すると、歯を支える歯周組織が破壊され、歯ぐきは後退して歯が長くなったように見えます。歯周病が治った後もこの後退した歯ぐきは元に戻らないため、笑ったときの見栄えを気にされる方も多くいらっしゃいます。根面被覆術は歯肉を移植して見栄えを改善する手術です。
治療前
治療後
- 症状 歯周ポケットの一部がかなり深くなった状態で歯根が露出し、歯肉もなくなり菌が繁殖している状態です。
- 治療方法 歯肉を移植して縫合した後、露出していた歯根を覆う根面被覆術を行いました。
- 使用した物 オールセラミックスの被せ物
- 治療期間 おおむね半年
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 200,000円 (税込み)
治療前
治療後
- 症状 歯並びや噛み合わせが悪い状態です。歯周ポケットが深く、歯周病が悪化している状態で来院されました。
- 治療方法 歯の移動を効率よく短期間で行うためにPAOO(即時矯正)で対応しました。歯が適切に移動できるように歯槽骨(歯ぐきの骨)に切れ目を入れ、歯の移動と骨再生を同時に行い、短期間で矯正治療が完了できました。
- 使用した物 即時抜歯矯正治療のみ
- 治療期間 おおむね半年
- 治療に伴うリスク 再生療法における術後のリスクは、移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがあります。
- 金額 200,000円 (税込み)
インプラントと歯周病の関連性について
何らかの理由で歯が失われた時、すぐに噛む能力を取り戻す治療が求められます。そのためには入れ歯、ブリッジ、インプラントなどの補綴治療が利用可能で、インプラントは特に自然な見た目と機能性を提供する高度な治療法として注目されています。しかし、歯周病により歯が失われた際には、インプラント治療が困難な場合があるため、患者が希望する治療が実現できないこともあります。 では、歯周病とインプラント治療との間には何が関連性があるのでしょうか?歯の失われ方がインプラント治療の適用に影響する?
しかし、歯を失った原因によっては…
インプラント治療後の注意点
まとめ
歯周病と歯列矯正治療
以前より歯周病の分野において、「歯並びが整っていない(不正咬合)とプラークコントロールが困難になり、歯周病の進行を早める」と考えられてきました。歯周病が進行するにつれて、病的な歯の移動が自然に起き、歯の並びも乱れてしまいます。 これにより、歯列矯正治療が歯周病治療の一部として認識されるきっかけとなったのです。 この考え方から、「歯周病を伴う患者さまの矯正治療」を”歯周矯正治療”と呼ぶようになりました。歯周病を伴う患者さまが歯を適切な位置に移動させることで、咬合力(咬む力)の負担が適切に分散され、周囲の骨の一部が再生するなど、近年では「歯周矯正治療」が歯周治療後の歯周組織の安定に貢献するとの報告が増えてきました。 しかし、歯周病で病的な歯の移動が起こった歯並びを無闇に矯正すべきかと言うと、答えは否です。 歯周炎患者(歯肉炎を除く)を対象とした研究によれば、「歯周ポケット(4mm以上)がある歯を動かす場合、ポケット内にプラークや歯石が存在すると、矯正力が歯周病原因菌の活動を増加させ、歯周病をさらに悪化させる」と報告されています。プラークコントロールがカギとなります
歯周矯正治療の際に考慮すべき事項とは?
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- 支持骨が少ない歯を矯正に参加させず、前歯など限定的な範囲での矯正治療だけで目標を達成できないか?
- 支持骨の少ない歯を最小限の負担(矯正力の大きさ、移動量、期間など)で動かし、目標を達成できないか?
- 歯周矯正治療後に、冠やブリッジなどの補綴治療が必要にならないか?
- 歯周矯正治療後に、部分的なインプラント治療が必要にならないか?
- 全顎的なインプラント治療を計画することにより、歯周矯正治療を行うよりも、患者さまの負担(費用、治療期間、治療に関わる患者さまの労力など)が小さくなり、治療後の安定性も優れ、審美性も期待できるのではないか?